菩提樹
Tilia miquiliana シナノキ科 *お釈迦様が悟りを開いた菩提樹はクワ科のインドボダイジュ *シューベルトの歌に出てくる菩提樹は本種の近縁セイヨウボダイジュ。いわゆるリンデンティーなどにするもの
家の近くの沼のほとりに
この菩提樹はあります
つぼみを見つけたのは1月ほど前
開花をとても楽しみにしていました
早朝5時過ぎに朝もやかたこめ
今日は写真を撮る日だよ
と言われた気がして
早起きしてカメラを持ってでかけた
1週間ほど前に
一輪だけ咲いていたのを確認
それが今日はたくさんの花がひらき
甘い香りが漂っていた
まだ日の出前
周囲の写真を撮りながら
日の出をまつ
太陽があたりを照らしはじめ
菩提樹にもあたる太陽光線は
葉の隙間を縫って
花々を照らし出す
花は葉に覆われているため
外側からだとチラッとしか見えない
芳香を漂わせているため
それに惹きつけられて
蜂のように近づく
下に降りている枝を潜り抜け
内側に入り込むと
枝から下にたれた房に
たくさんの花がついているのを
見ることができる
白と言うか
クリーム色の花
触ってみるとしっかりした感触
一輪であっても
とても強くて良い香りなのに
これだけ咲いていると
どうかと思ったが
自然に自分の細胞を通り抜けるような
クリアな甘くて爽やかな香りだ
お釈迦様が悟りを開いたという菩提樹とは種類が違うが
豊かな枝葉に覆われた空間は
そこに座れば静かに瞑想できるような場所だ
しかし、くまさんも通るこの場所
瞑想はちょっと遠慮して
少しだけ花を採取させてもらうことにした
花を護る萼片はしっかりとしていて薄緑
中から白い花弁が現れる
それぞれ5片に分かれている
開花するとたくさんある雄しべが現れ
真ん中には既に丸みを持った子房があり
受粉すると即座に膨らんでくるようで
真ん丸な実がいくつか見られた
托葉の主脈から花序が出ている形で
花序は途中で3つに分かれ
さらに3つに分かれ、3,3,1と花がつくが
房により多少ばらつきがある
雄しべが黄色から茶に変わったものは
香りが一番強く感じられる
蜂たちが蜜を取りにたくさん来ていた
花を少し採取させてもらった
今ここにある自然界の豊かさは
その時に味わい尽くしたいと思う反面
これだけのものを何とかしたいと思うと
蒸留も、乾燥も、チンキも
あれもこれもと心がざわついてくる
それを脇に置き
ひたすら触れて採取することに集中する
私たちょっと届く範囲を採取したぐらいでは
この菩提樹からの恵みは
ちっとも擦り減ったりしない
最初はつぼみもたくさん残っているので
房から香りが強いものを一輪づつ採っていたが
引っ張る時に房ごととれるものもあったので
遠慮しなくていいや、と思い
とり頃の房を見つけて採取させてもらった
好きなだけたくさん採りなさい
そして苦しむ人を癒すのです
そんな言葉が聞こえてきた
もう戻らないといけない時間になり
天候や自分の都合で
また採りに来れるかなぁと
名残惜しんでいると
私はいつもここにいる
花の無い時期にもここにいる
そして来年もまた同じように
花を咲かせる
何も心配することはない
という感じが伝わってきた
今ここにある物質に対する執着は
自分の心を波立たせるが
いつも変わらずそこに在るもの
その存在の確かさは
世界との宇宙とのつながりと
安心感を与えてくれるものだ
落葉した菩提樹
菩提樹/シューベルト